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2014年 12月 17日

第10話 ともに生きる 【カテゴリ 連載シリーズのつづき】

(初代はなと一緒に歩いた四国遍路の旅。そのお話をまとめたのが電子書籍「犬連れへんろ」です。この第10話までは前編に収められています。)

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「ともに生きる」
  四十番札所 観自在寺 → 四十三番札所 明石寺

 今回は、少し前置きが長くなります。
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 2002年GWのへんろ旅は残念ながら、3日間で切り上げてしまいました。はなの具合が悪くなってしまったのです。大好きな松尾峠へ向かう道は、はなを歩かせて、台車は何とか引っぱりあげました。ヨロヨロと歩くはなを見て、本当に年をとってしまったものだなぁ、と思っていましたが、峠から下りて須の川キャンプ場でテント泊している間も、どうも様子が変なのです。異常に水を沢山飲み、その分、異常にたくさんのオシッコをします。そして暑くもないのに、ハーハーと呼吸が速く、目が充血していました。
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キャンプ場で2泊したのですが、はなの様子が変わらないので、急遽九州へ戻ることにしました。何といっても、私たちの遍路の主役ははなで、はなと一緒に歩きたくて始めた遍路なのですからね。肝心の主役が病気では仕方ありません。九州に戻るとすぐ、かかりつけのお医者さんに見せましたが、血液検査をしてビックリ! 何と動物病院の機械では測定不能なほど、血糖値が上がっていたのです。そして下された診断は『糖尿病』…。翌日からインシュリンの注射を打ち続ける日々となりました。素人の私が毎日注射をするので痛かっただろうし、グッタリした様子で注射器を恐がるはなを見て、もう寿命ではないかと私たちはすっかり落ち込んでしまいました。ところが2週間たったある日、突然血糖値が正常値に戻りました。そのため、毎日注射していたインシュリンも段々と減らされ、結局注射はしなくて良くなったのです。そうなると、はなちゃん復活! あれほど辛そうだったのが嘘のように、また元気なお年寄り犬に戻ってくれたのです。
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(ひとまずメデタシメデタシですが…またはなの健康については別の機会にお話ししますね。)
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 さて、そうして無事に夏を迎えることができたのですが、この夏の旅はGWのことがありましたので、これまで以上に、はなに無理をさせないように気をつけて歩きました。まずは車でお四国入り。そして前回もお世話になった須の川キャンプ場で車中一泊です。「これでしばらくクーラーともお別れ…」という思いもあったためか、何回か夜中にエンジンをかけてクーラーをつけてしまいました。こんな事でよく夏の野宿遍路ができると思うのですが、歩き始めると文明を忘れた身体になってしまうのですから、不思議なものですね。
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 出発の朝、「どろぼうよけ」のお守りとして、いつものように納め札を1枚、フロントガラスに貼り付けます。田んぼの虫よけ・豊作祈願からどろぼうよけまで、いろんな所に引っぱり出されますので、お大師さまも大忙しです(笑)。お遍路中は「特に何かをお願いしにまわっているのではないから、強いて言えば天下泰平・家内安全・心身健康かな」などとうそぶいていましたが、しかしてその実態は…日々あらゆる場面で、お大師さまに沢山のお願いごとをしている自分に気づきます。そんな自分に少し反省しながらも、いつも心の中にお大師さんがいて下さるのだ、という心地よさを感じながら、さあ行きましょう。朝、涼しいうちに海沿いの気持ちいい道を歩きます。このあたりは真珠の養殖が盛んで、沢山の作業小屋がならんでいます。歩いているからこそ、その町を支えている産業を肌で感じることもできます。一般的には昔と違って、どこへ行っても同じような街や、お店があり、だんだん地域色が薄れていますが、これもグローバル化の弊害なのでしょうか。でも、お四国の歩き旅では、まだまだ日本らしい懐かしい風景を、沢山目にすることができますので、心が救われるのでしょうね。
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 さて、この日一番の難行苦行は、ちょうどお昼に突入して25分に脱出した『松尾トンネル』。現代のお遍路さんは、昔のお遍路さんと違った意味で、命がけなのだなーという実感です。主人の真似をして、手ぬぐいを鼻と口に巻き、なるべく息を止めて歩きます。はなは私たちより何倍も鼻が敏感なのに、私たちのように息を止めようと思いませんから、思い切り汚い空気を吸ってしまうのでしょうね。「ごめんよ、はな。なるべく急いで抜けるからね」トンネルの中はとにかく煤だらけで、汚い空気が充満して、ボンヤリしています。そしてたった1台の車がトンネルに入った瞬間から、戦車隊が行列でやってきたような、もの凄い音がするのです。
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普通車でも、ものすごい音ですが、トラックとなると、もう歩いていられません。自分たちの身を風圧から守るために、ひとまず立ち止まって、壁ぎわに寄り、通りすぎるのを待たなければいけません。轟音とともに排気ガスを一杯残して、すごいスピードで去って行く車たち。日頃お世話になっているのを承知で言うのですが…「自動車なんか、この世の中から無くなってしまえ!」という気分です。ほんの百五十年前には、誰でも歩いて旅をしていました。裕福な人でも駕籠に乗ったり、馬に乗ったり、とにかく環境を汚したり地球に迷惑をかけることなく移動していたはずです。そういう時代と比べると、何と罪深い私たちの時代でしょうか。道路の成り立ちにしても車優先が度を越しているように思います。歩いたり自転車に乗って旅をしても危険がないような、そんな人間のための道を、日本中に張りめぐらせて作って欲しいと、心から願います。そんな環境行政に対する要望も飛び出してくるお遍路の旅なのです。
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 ようやく夕方4時半、別格霊場の龍光院(りゅうこういん)に到着しました。ちょうどお盆で沢山の人々が訪れていましたが、快く境内にテントをはる許可をいただき、駐車場の隅にテント泊です。暑さでヘロヘロになっていましたが、頑張って小高い丘の上の境内まで台車を押して上がりました。見晴らしも良く、風通しもよく、朝方には少し寒くなってしまった程で、第1日目の宿泊地は大成功でした。おまけに、朝出発しようと準備していると、お寺の奥さんからお接待まで。おかげさまで、とても気持ちよく朝の街に歩き出して行きました。テクテクごろごろ……歩くこと30分、朝早くからいい匂いがして、お腹がグーッとなります。T字路の突き当たりにあるお弁当屋さん「片山」です。まだ準備中でしたが、ひとまず一日の元気のために何か買って食べようと思い、すぐに出来るという幕の内弁当を2つお願いしました。出来たてホカホカ、もうたまりません。「ありがとう。おいくらですか?」と尋ねると、何とお接待です。おつりを多めにくれたりするお接待は経験ありますが、買うつもりでいたのに、お金をとってもらえなかったのは初めてです。朝早くから準備をされ、いそがしく働いておられるのに、このような心づかいをしてくださる、そんな方たちの幸せを心から祈りながら、ありがたくお弁当をもらって歩きました。少し歩いたところにある、踏切横の駐車場で、さーてホカホカのおいしい朝ごはんです。あぁ幸せ! 何だか今日は朝からお接待つづきで申し訳ないくらいです。
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 お昼が近づいてくると暑さも本番になってきました。頭がクラクラしてきたので、41番龍光寺(りゅうこうじ)の下の食堂で、かき氷を食べました。こんな時、沢山食べ過ぎるとお腹をこわすので、二人で1個の注文です。はなも日陰で少し休憩し、水をガブガブ飲んで、しばらく涼みました。そしてひと心地ついてから、42番仏木寺(ぶつもくじ)へ向かいます。
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 田んぼの中の道をずーっと真っ直ぐ歩きます。日陰がないので結構暑さがこたえますが、田んぼの稲がもう収穫間近で、サワサワと気持ちいい音をたて、風にそよいでいます。こんなだだっぴろい景色も普段の生活にはないものなので、何だかスカーンとした気持ちになって来ます。仏木寺が見えてきて、もうすぐ…と思った時、道脇の家から、一人のおばあさんが血相を変えて走り出てきました。何ごとかと思っていると、「ちょっと来て! ここに荷物を置いて!さあ、こっちへこっちへ。犬も一緒に!」と私たちを案内して行きます。戸惑う私たちを、半ば強引に、引っぱるように家の中へ連れて行きました。台所と座敷の間の土間に私たちを案内し、氷の入ったコップに梅サワーをなみなみ入れて渡すと、おばあちゃんは、すぐに忙しそうに台所で何かを作り始めました。
「ちょうどお昼だから、そうめんを食べて行きなさい」
 ゆでたそうめんを庭へ持っていって井戸水で冷やして、その帰りに畑のネギをちぎって来て、また台所で忙しそうに働きます。へんろ道沿いのこの大きなおウチで一人で暮らしている、高田さんのおばあちゃん。私たちを見て、「ありがたい、ありがたい」ととても喜んでくれました。いつも家の前をお遍路さんが通ると、お接待をするのだそうです。出来上がったそうめんをお椀に入れて、私たちに食べさせ、その間、「ちょっとお杖を借りますよ」と言って、主人の金剛杖を手にとり、その杖で肩をこすったり腰をこすったり…。次は私の杖で膝をこすって、小さな声で、「南無大師遍照金剛」と唱えていらっしゃいました。それから主人の菅笠をかぶって頭をさすり、「ボケませんように、ボケませんように」とつぶやきます。あさってには、息子さん一家がお盆休みでやって来るけど、今はそうめんぐらいしかなくて申し訳ないと、しきりに謝っていましたが、次から次へと飲み物、食べ物を出されて、結局、私たちは全部食べきれませんでした。おばあちゃん、残してごめんなさいね。
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私がカメラを出すと、「こんな格好だから写さないで」と言うので、「おばあちゃんは写しませんよ」と言いながら、しっかり写してしまいました。重ね重ねごめんなさい(笑)。それにしても、写真は写すなと言いながら、急いで鏡の前に行って髪を整えるあたり、やっぱりいくつになっても女なんだなぁと、とても可愛らしく思ったものです。そしていよいよ、すぐそこに見えていた仏木寺にお参りです。高田さんのおばあちゃんとの約束通り、おばあちゃんの代わりに鐘を二つ続けて打ちました。この鐘の音を聞いたら、お寺の方を向いて拝むと言っていたので、特に大きな音で鳴らし、私たちも一緒に丁寧に手を合わせました。今回の旅は、特にいただいたお接待がとても印象深く、このようにお接待をいただく方の分までお参りしているのだと思うと、いい加減なお参りは決してできないなぁ、と思います。だからこそ、自然と心をこめてお参りをするようになってくるのでしょうね。
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 この日は峠の展望台で一泊、山の上だから少しは涼しくて、よく眠れるのではないかと思っていましたが、とんでもない! 一台のスポーツカーがやってきてドリフト(キュルキュルとタイヤの音を鳴らして、お尻を振りながら走ることです)の練習を始めました。展望台の下が、ちょうど車道のヘアピンカーブに囲まれていますので、車の音が坂道を上ってきて、その後下って行くまで、ずーっとうるさいのです。ほとんど一晩中、私たちのテントのまわりを、その車がグルグル回っているようでした。今さら場所をかえる訳にもいかないし、すっかり睡眠不足になってしまいました。
「本当にもう、車なんかこの世から…」とまた言いたくなってしまいますね。確かに車は便利なもので、このお遍路でも四国に来るまでは車に乗ってきます。日々の生活でも、公共の交通機関に犬を乗せることは難しいので、どうしても歩いていけない距離になると、車を使うことになります。それでも敢えて言いますが、今や車の事故で亡くなる人は年間1万人です(※注 2000年当時は9千名を越えていましたが、2008年は5千名強でした)。いや正確には、24時間以内に亡くなった人だけがカウントされていますので、もっと実際は多いでしょう。毎年そのぐらいの数の人が、きちんと決められたように亡くなっているのです。誰も自分がその1万人に入るなどとは夢にも思っていないのに、交通事故でひどい目に遭ってしまう人が、確かに大勢いるのです。もうそろそろ本気で、車を減らす工夫をしなければならないのではないでしょうか。そして何より、車の運転が便利で簡単になったのは良くなかったのではないでしょうか。不便があるからこそ、人間の身体は工夫を重ねて進化して来たのです。これほど便利な世の中になれば、もう人類はあらゆる機能を退化させていくしか道はないと思うのです。うーん、車の騒音から、人類の未来を占ってしまうのも、お遍路の旅ならではです。
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 地球環境にとって自動車は敵! と分かっているのに、もはや使わずにはいられない時代…まして自動車産業に身を置き、お世話になっている私たち。本当に考えれば考えるほど辛い立場なのですが、ひとまず翌日は、43番明石寺(みょうせきじ)をお参りして、打ち止めにすることにしました。それからは、ちょっと無理をして暗くなるまで大洲の肱川を目指し歩き続けました。暗くなった車道では、以前、牟岐の警察署でお接待いただいた反射テープがとても活躍してくれて…
 あら? そもそもなぜ、肱川まで無理をして歩かなければならなかったのかしら? それは次回のお遍路の時、車をここに置いて出発できるから。なーんだ、最後の最後は結局、車の都合で、がんばって歩かなければならなくなったんですねー。それを思うと、またちょっと複雑な気持ちにもなりますが…こういう現実も受け止めながら、私たちはまた、忙しい日常世界へと戻っていったのでした。(2002年・夏)
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「e犬連れへんろ(後編)」へつづく

by inuzure | 2014-12-17 18:46 | ■連載シリーズ | Trackback | Comments(0)
2009年 08月 01日

e 犬連れへんろ・前編 好評発売中でーす♪

カテゴリ(連載シリーズ)に掲載していたお話は、
お遍路雑誌「四国へんろ」改め「巡礼マガジン」に、連載していただいてた
「フォト&エッセイ 犬連れ遍路」をもとにしていました。

そのお話をまとめて、このたび電子ブック「e 犬連れへんろ」を作りました。
パソコンにダウンロードするタイプの本ですので、1回のダウンロードで315円。
このブログに掲載していた第9話「雪の足摺へんろ旅」までに加えて、
先代はなが老犬になってから患った、めずらしい病気についてもつづっています。
前編は43番明石寺(みょうせきじ)までの歩き遍路の様子です。
ただいま、後編も執筆中! よろしかったら、どうぞごらんになってくださいませ<(_ _)>

電子ブックは右側の欄のバナーをクリックして、ごらんくださいね。
試し読みもできます♪


by inuzure | 2009-08-01 11:29 | ■連載シリーズ | Trackback | Comments(0)
2008年 09月 05日

第9話 雪の足摺へんろ旅 2001~2002冬

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 フェリーの旅はいいものです。甲板で海風を受けながら、買ってきたお弁当を広げると、もうすっかり、のんびり気分。バタバタと、あわただしく旅の準備をした事も、イライラと、渋滞をくぐり抜けて来た事も忘れ、突然、の~んびりゆ~っくりした時間が流れはじめるのです。この冬のお遍路は第37番札所岩本寺(Iwa-moto-ji)から歩きます。
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 まず、宿毛(Sukumo)の港に着くと、車で岩本寺まで。今日は、この岩本寺の駐車場に車を置かせていただき、お寺の宿坊に一泊してから、翌朝一番の出発です。夏にはとてもできない事ですが、冬は、はなを車にひと晩寝かせる事ができるので安心です。お蔭で、暖かいお風呂に入ってゆっくりと眠り、翌朝すがすがしく目覚めてからの、歩き遍路出発となります。まだ暗い5時半起床。荷物を片づけて、白装束に着替え、出発すると、門前の喫茶店がもう開いていて、モーニングが食べられるそうです。やっぱりお四国らしいなぁ、と感心しながら、早速、腹ごしらえをしましょう。この朝のメニューは、パンとコーヒー・サラダなどに続いて、なんと味噌汁が登場しました!ちょっと、びっくり(笑)。私たち以外のお客さんが、みんなご近所のおじちゃん、おばちゃん達でしたから「やっぱり、朝は味噌汁さ~」と言う事なのかなぁ?と思いつつ、また楽しい旅がはじまります。


c0049299_20423339.jpg さて、冬ですから当たり前ですが「寒い、寒い」と言いながら、ピューピュー吹く風の中、体を温めるように歩いていると、それもそのはず、ちらほらと雪が舞って来ました。そして、数年前に出会った、おばちゃまカメラマンの国恵さんと待ち合わせをした峠に近づくと、もうみぞれ混じりの吹雪です。電話で話をしたときに「そこで待っててね」と言われたので、峠のドライブインの軒先で吹雪宿り?をしていたのですが、そこに、わざわざ私たちのために、国恵さんが作ってくれた、白玉入りの特製おしるこを持ってきてくれました、それもお鍋にお玉をつっこんだまま(笑)。もちろん、立ったままですが、その場でおいしく頂きました。時には我が子のように接して下さる、四国の方々のこのような心があるからこそ、おへんろ文化は長く育まれて来たのでしょうね。こうして私たちは、身も心もポカポカになり、雪の街を歩いていても、とても満たされた気持ちになる事ができたのです。南九州に暮らしている私たちは、ほんとは雪が珍しくて、ちょっとワクワクするような気分なのですが、降ったりやんだり、お天気につれて、ポンチョを着たり脱いだりしながら、ピタピタ、ゴロゴロと冷たい風の中を歩き続けました。
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c0049299_21154012.jpg 2001年12月30日(日)この日のお宿は、いつも大変お世話になっている、道路沿いの大規模公園です。何といっても、トイレと水があって、テントをはれば、ゆっくりできるのです。そして、迎えた大晦日の翌朝には、なんと、太平洋からの日の出をどーんと真正面に見ながら、本当にキリリとしたステキなひとときを過ごす事ができました。テントのすぐ前を、朝の散歩の人たちが「おはよう!」と言って通っていきますよ。毎日こんな絶景の散歩コースが歩けるなんて、うらやましいなぁ。きのうは高知のカメラマン山沖氏が、古いトンネルを通る、私たちの写真をとりに現われ、懐かしい再会をしたのですが、きょう大晦日は、同じくカメラマンの竹葉さんが差し入れを持って来てくれました(ありがたや)。



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何しろこちらは歩きなので、そうそうおいしいものには、ありつけませんし、私たちの居場所は、歩きの遍路道さえ知っていれば、すぐに見つけることができます。そして、そのたびに休憩をとり、おいしいものを食べられる私たちにとっては、手をあわせたくなるほどに、本当にありがたい事なのでした。


 「さーて、年越しはどの辺でするかなぁ…」などと話しながら、テクテクゴロゴロ歩いていましたが、私たちは結局、その前後の行程も考えて、砂浜で、テントをはることにしました。いつもは日が暮れるとさっさと寝袋に入って寝てしまうのですが、この日は大晦日。久しぶりにたき火をして暖を取り、しばらく、じっと炎をみつめながら、静かな時間を楽しみました。





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 「もう、大晦日なのねえ…」
 「また一年が駆け足で過ぎていったね。」
 「こんな調子で、人生なんて、あっという間に終わってしまうのねぇ。」
 「だからこそ、一日一日を大切に生きていかなきゃね。」
 本当に、普段はバタバタと忙しく騒がしい生活をしていますが、おへんろで過ごす時間はとても静か…、思わずこんな会話も飛び出してきます。この静けさの一番の原因は、何といってもTVがない事でしょうね。TVだけではなく、現代人の私たちが持っている、沢山の物・もの・モノ!家の中を埋めつくしている沢山のモノの中で、本当に無くてはならないものって、果たして、いくつあるのでしょうか? いそがしい時間に流され、他人と自分との比較に振り回され、おまけに騒音の波にもまれていると、静かに頭を休めるような時間は、なかなか持つことができないものですよね。そういう点でも、お遍路の静かな時間は、私たちに、本当に忘れていた大切な事を、沢山思い出させてくれるような気がします。そして、ここ10年ほど、ずっとそうなのですが、またしても、TVもラジオもおせちもない(笑)ないない尽くしのお蔭で、静かな静かな大晦日の夜が、あたたかな焚き火の炎とともに、静かに更けて行きました。
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 2002年1月1日(火)朝、テントで目覚めると、そこは砂浜です。初日を拝もうと思っていましたので、夕べの焚き火の跡に、また火を起こしました。凍える身体を焚き火で暖めていると、少しずつ空と海の境界線が見えてきます。雲は出ているけれど、とても素敵な初日です。今、この瞬間を、日本じゅうで、一体どれほどの人が固唾を飲んで見守っているのでしょうか。昨日の朝日も、今日の朝日も、同じように素晴らしいのに。。。とは言いながらも、おめでたい初日に、やっぱり手を合わせてしまう私たちでした。今年もどうぞよろしくお願いいたします…。

 ここで、自主的伴走カメラマンのYさんたち登場。あわただしく新年の挨拶をして、私たちと初日の出の写真を撮ったかと思うと、もう次の撮影地、お正月らしい雪の風景を撮りに、山間の集落へ向かいました。またきっと、秘密の撮影ポイントへ行くのでしょうね^^v しかし実は、このあと彼らは、ちょっと後悔する事になるのです。だって、私たちについて来ていれば、それはそれは珍しい「お正月の雪の足摺岬」を撮る、千載一遇のチャンスが巡ってきたのですからねぇ、残念(笑)!

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c0049299_9544956.jpg さて翌日も、海水浴場の隅っこにテントを張らせていただきましたが、朝起きてみると、砂浜と波の間に雪が積もり、白い帯状のじゅうたんになっていました。とてもきれいだったので何枚か写真をとりましたが、すぐに本格的な雪になりそうでしたので、あわてて荷物を片づけての出発です。降ったり止んだりの雪に、またまたポンチョを着たり脱いだりしながら、午後2時ごろ、ようやく足摺岬に到着。今日は、いよいよ2002年はじめてのお参り、第38番札所 金剛福寺(Kongo-fuku-ji)に初詣です。ちょっとおめかしの沢山の初詣の人々に混じって、ちょっと汚れたお遍路さん二人と犬一匹も、無事にお参りを済ませました。納経所へ行くと、はなを見て、中から白いワンチャンが出てきましたよ。はなもお利口さんですが(親ばかです)このシロチャンも納経所の皆さんや、参拝者の方々から可愛がられて、とてもお利口さんのようです。ところが、2匹とも顔を突き合わせてクンクンと匂いを嗅いでいたかと思うと、いきなり、シロチャンが「グワ~!」と、はなに向かって飛びかかりました。ここはシロチャンにとっては、自分の縄張りですから、侵入者と見なされたようです。一瞬、しまった!と思いましたが、次の瞬間には、もう形勢逆転です。なんとはなが、シロチャンの上に乗っかり、仁王立ちしているのです。上から踏みつけられて、シロチャンは「キャイーン」と鳴いてしまいました。ごめんね~シロチャン。でも、お互いに怪我もなく、シロチャンも無事に、納経所の中へ帰って行きました。一方はなは、「年はとっても、まだまだ私も、捨てたもんじゃあないわね。」とでも言いたげに、余裕を見せて耳をかいたりしています。全くのん気なものです。どうも皆様、お騒がせいたしました。こんな事件はあったものの、その頃、私たちのフォト&エッセイが掲載されていた四国へんろ誌(残念ながら廃刊になりました)の読者だった納経所のお母さんから、万が一、夜に雪が降っても大丈夫な場所を教えていただきました。そのお蔭で、この暴風雪のようなひどい夜を、小さなテントで、二人と一匹、無事に心地よく過ごすことができたのです。本当にありがとうございました。
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c0049299_1094579.jpg さて次の朝、目覚めると、なんだか妙にシーンとしています。「ひょっとして…」と言いながら、テントの外に出た主人が「やっぱり雪積もってるよ」と言って戻ってきました。早速、二人と一匹で、足摺岬の展望台に登ると、それはそれは素晴らしい景色。予想だにしなかった雪の足摺岬です。何だか突然、ご褒美をいただいたような嬉しい気持ちになり、夢中で写真を撮っていました。展望台には、シロチャンと一緒に、朝の散歩に来られた住職さんもいらっしゃいましたが、こんな景色ははじめてご覧になるのだとか。門前の食堂のおばちゃんも、生まれてはじめてだと言っていたし、本当に私たちは、なんて恵まれた旅をしていることか! この南国足摺の雪景色を見られただけでも、この冬の旅に出た甲斐がありました^。^

 足摺岬からは、今回は行きと同じ道を戻りましたが、相変わらず降ったり止んだりの雪の中、群馬から来られた70代のご夫婦へんろさんにお会いしました。ご高齢でも、元気に仲良く、お二人で歩いておられるご様子を見て、私たちもああいう夫婦になりたいものだ、と二人で話したものです。さらに、2日前と同じ海水浴場で、もう一泊したのですが、駐車場にライトがついたままの車がありました。そこで、砂浜に出ていた、若いカップルのお二人さんに、お知らせしたところ、そのお礼とお接待に…と言って、彼女の手作りのお弁当や、クッキーをおすそ分けしてくれたのです。彼のために作った手作りのナッツクッキー、愛情も加わって、さらにおいしぃ~!!文字通り「ごちそうさま」でしたね(笑)。

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 その翌日は、少し時間はかかったものの、何とかダムの公園までたどり着き、そこで一泊してから、今回の打ち止めのお寺第39番札所 延光寺(En-ko-ji)へお参りです。今回は、8日間で、たった3つのお寺を巡る、というゆっくりゆっくりの寒い旅でしたが、お蔭さまで沢山の素晴らしい景色にも出会えましたし、また素敵な人々にも会えました。最後にもう一度、延光寺で群馬のご夫妻に再会する、というおまけつきで、このお二人のように末永く仲良く暮らしていけますように、そして、はなも含めて、健やかな毎日が過ごせますように、と丁寧にお参りをして、この冬の「雪の足摺へんろ旅」は静かに幕を閉じました。








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( じゃ、またね♪ )

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★追記★
★いつも私たちの写真を撮ってくださる、高知の竹葉笑子さんが、
★第12回総合写真展で優秀賞を受賞されました。おめでとうございます!!
★平成20年10月16日(木)~30日(木)東京都美術館(台東区上野公園)
★入場無料だそうです。お時間のある方は、ごらんになってくださいませ。

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by inuzure | 2008-09-05 20:31 | ■連載シリーズ | Trackback | Comments(18)
2008年 08月 12日

第8話 ヘロヘロ遍路 ~2001年夏の旅【後半】

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c0049299_1538435.jpg さて次の日は、少しでも涼しいうちにと5時には起きて、テントの撤収作業に入りましたが…、荷物をまとめ終わったと同時に雨が降り出しました。しょーがないなぁ。その場で私たち二人はポンチョをかぶり、荷物とはなが濡れないように、ビニールやら傘やらで工夫しながら、雨をやり過ごして…そんなこんなで出発したときは7時になっていました。しばらくは降ったり止んだりしていましたので、なんとか歩けていましたが、小雨から今度は急に、どしゃぶりの雨に! その時、ちょうど目の前にあったのが『珈琲や』さん、第35番札所 清瀧寺(Kiyo-taki-ji)の麓にある喫茶店です。ひさしぶりにおいしいモーニングでも食べながら、どしゃぶりの雨をやり過ごそうか、という話になり、「はな」は素敵なぶどうのつるが繁ったお店の軒先(雨に濡れない所)に待たせておくことにしました。

 店に入ってみると、朝の8時前なのに、なんとほぼ満席です。実は私、「お四国七不思議」の一つだと思うのですが、四国の喫茶店は大体朝早く、早いところでは早朝6時ぐらいから開いていて、ほとんどのお客さんがモーニングを食べているのです。このお店では、これから仕事に向かう男の人たちと、夫婦連れで来ている近所の人がいました。以前寄った喫茶店では親子連れや、おじいちゃんおばあちゃんまで来ていて、近所の人たちが、みんなここで朝ごはんを食べているのではないか、と思う程だったのです。そして、このように朝から人が一杯いる喫茶店は、大体モーニングが安くておいしいと相場が決まっています(^。^)vこの朝の私たちの朝ごはんも、もちろん!とてもおいしくて、スープもパンもサラダも果物も、そしてデザートとコーヒーもついた、とても大満足なものでした(2001年当時、びっくり500円)。これもお大師さんのお計らいか、お店を出るころには雨も上がり、お会計を済ませたあとでは、ご主人と奥さんが「はなちゃんへどうぞ」と言って、ドッグフードのたくさん入った袋までお接待して下さいました。

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 お接待といえば、もう一つ先の第36番札所 青龍寺(Sho-ryu-ji)に向かう海沿いの道では、時々通り雨が降っていました。雨具はもっていましたが、リュックを下ろしての出し入れが面倒なので、木陰で雨宿りを兼ねて、休憩しながら進みました。すると、合羽を来て原付バイクに乗ったおばさんが、向こうからやって来て、ヒザ元に置いていた古い傘を出して「これはもう要らん傘やから、使ってから捨ててな」と言いながら手渡して下さいました。有難くいただいて、深々と頭をさげていると、あれ?また、もと来た方へ戻って行かれる。なんと、ビックリ!! たまたま、通りすがりでお接待して下さったのではなく、どこかで私たちを見かけて、わざわざ雨の中、バイクに乗って、傘を持ってきて下さったのです。本当にあれもこれも感謝しきれない事ばかり。お世話になったたくさんの人たちが、みんな幸せでありますようにと、祈らずにはいられなくなるのが、お四国の旅なのです。

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(↑ 多ノ郷駅にて)

c0049299_15454834.jpg 今年の夏は例年より厳しく、さらに通り雨で湿気が増していましたので、七子峠の手前でついに私たち夫婦がグロッキー…。多ノ郷駅までは辿り着きましたが、相談した結果、ひとまず主人が車を取って来て、今晩ひと晩は、涼しい車の中で寝てから、また考えることにしました。
 主人の帰りを待つ間、疲れたはなはべったりと床に寝てしまい、私はその傍らで待合室にやって来る人達とお話をしたり荷物の整理をしたりして過ごしました。その時ふと思いついて宮崎の自宅の留守電を確認してみると、なんと数年前に私たちのおへんろ姿を写真にとって下さった中村市(現四万十市)のTさんから電話が入っていました。早速連絡して話をしているうちに、はなも一緒にお宅に泊めていただけるとか…。これまでにも宿のお接待を申し出て下さった方はいらしたのですが、ほんとにお言葉に甘えたことはありません。結局、車で戻ってきた主人と相談した結果、猛暑の中のテント泊で寝不足が続いていたので、今回はじめてお言葉に甘えてみよう、という事になりました。実は、犬を飼ったことがないお宅だったので、はじめは玄関の板の間に寝かされていた「はな」なのですが、カメラマンY氏も一緒に、数年ぶりの再会で会話がはずんでいるうちに、強引に部屋に入ってきてしまい、結局はいつものように、二人と一匹、お布団の上で、川の字になって寝てしまいました。

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  ↑  牛をながめる  
  ↓  北海道からはるばる自転車旅行にきた姉妹

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 さあ次の朝は、しっかり朝ごはんまで作っていただいて、またちょっと元気が出ましたので、もう一日歩いて、第37番札所 岩本寺(Iwa-moto-ji)までがんばりましょう。七子峠と言えば、前回ここを通ったときも夏でした。へとへとになって須崎市内で宿をとる予定が、泊まる場所がうまく見つからず、やけくそで夜通し峠を歩き通したのです。「夜のほうが涼しいから歩きやすい」などと、自分たちを慰めながら歩きましたが、一日の歩きを終えた時間から、また寝ないで歩いたので、疲れがピークを越えると足だけが前へ前へと進み、身体の感覚がなくなっていくような気がしたものです。満天の星を見ながら、暗闇をふわふわと歩き、沢山の大きな流れ星に導かれるように2人と1匹で歩き続けたのでした。「早朝、岩本寺に着いてから、駅前の歩道脇に転がって、寝てしまったんだよねぇ。あの時に比べれば、今日の七子峠は余裕の旅のしめくくりだね」そんな話をしながら、峠を下っていくと、2台の自転車とともに、2人の若い女性が木陰で休憩していました。あいさつを交わして話を聞くと、北海道から、はるばるやって来て、九州や四国を自転車で旅している姉妹ということ。私たちの装束を見て、「何されてるんですか?」と質問されたので、お遍路の大体のことをわかりやすく説明してあげました。いつものように名刺がわりのお札を差し出すと、「これは何?」とまた質問。そして、お札に「はな」の名前まで書いてあるといって大喜び。「ご利益があるかも!」と言いながら、旅の無事を願って「へんろ犬はな」を二人揃って、真剣に拝んでくれました。その若い二人の姿が可愛らしくて、私たちは大笑いし、おかげさまで、また今回も、夏の遍路旅の締めくくりは、とてもほのぼのとして素敵なものになったのでした。
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(第9話 冬の旅へつづく^^)

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by inuzure | 2008-08-12 07:20 | ■連載シリーズ | Trackback | Comments(30)
2008年 08月 08日

第8話 ヘロヘロ遍路 ~2001年夏の旅【前半】

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 はな10歳の夏は、お天気に恵まれ、初めて作ったお米も思った以上のできばえでした。7月の終わりには、無事に稲刈りを終え、自分たちで作ったはじめてのお米を食べて、そのおいしさに毎日感激しながら、いよいよ待ちに待った夏休みがやってきました。西日本の記録的な暑さが少し心配でしたが、「もし“はな”が暑さで辛そうだったら、すぐに切り上げて帰ろう」という話をして、歩きへんろ2001夏の部、出発です!

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 さて今回一つめのお参りは、第31番札所 竹林寺(Chiku-rin-ji)。早朝の涼しい手洗い場に、ネコをお供に連れたおじいさんと、犬をお供に連れたおばあさんが、休憩していました。そこに私たち、犬を連れた夫婦遍路が加わり、「犬猫と人間の共生と健康について」をテーマに、早朝セミナーの始まりはじまり(笑)。おばあさんのお供のワンコも、はなと同じく老犬だというお話。でも、標高100mちょっとの、このお寺まで、毎朝散歩を続けているお陰で、ワンコもおばあちゃんも、とても足腰が丈夫で健康だということです。ネコを連れたおじいさんも、その話を聞いてウンウンと大きく頷かれ、やっぱり「歩く」ことは健康と長寿の基本なんだねぇ、という結論にいたりました。

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 次は海の絶景を眺められる第32番札所 禅師峰寺(Zenji-bu-ji)です。本堂と大師堂にお参りを済ませ、しばらく二人と一匹、風のとおるベンチに座って、眼下に広がる海をボーッと眺めました。ああ気持ちいい…。木陰のさわやかな風とこの景色があれば、いつまでもここに座っていたくなります。聞こえるのは、木々を揺らす風の音だけ。
真夏の歩きへんろは、もちろん暑いけれど、太平洋の青い青い海に、せみの声さえ吸い込まれてしまうのです。
静けさや 海にもしみ入るか? せみの声 (字あまり)

      禅師峰寺から見える風景 → → →

 禅師峰寺から、次の雪蹊寺へ向かうとき、お遍路さんは、浦戸湾を横切る浦戸大橋を渡るか、または種崎・長浜間の高知県営フェリーを使います。橋をわたるルートは、遠回りになりますので、そしてなんと言っても、このフェリー無料なので(笑)迷わずいつも、私たちはフェリー乗り場へと歩みを進めます。そのフェリー乗り場の手前、三里スーパーで、お昼ごはんを買い込んで、日陰になっている自転車置き場で食事をさせていただきました。実は歩いていると、道沿いのお店しかわからないので、意外と食事のチャンスは少ないのです。はじめて歩いた時は、まだちょっと時間が早いから…と言って1軒のお店をやり過ごすと、もう次のお店がずーっと延々と無い、という事もありました。ちょうどいい頃合いに、おいしそうな食べ物屋さんが目の前に現われることなんか、まず無い、と言ったほうがいいでしょう。ですから、近頃は少しだけ賢くなって、時間を気にせず、そしてお店の見栄えも気にせず(^。^)お店を見つけたら、ひとまず少しずつ食料を買い込んだり、何かちょっと食べたりするのです。そして、次にここを通る2年ほど先のために、食堂やお店の場所を地図に書き込みながら、歩いていきます。

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↑ 県営フェリー

 この県営フェリーは、旅のムードを高めてくれるお気に入りのツール。すっかり地元の人の生活道路の一部になっていて、車も自転車も人間も、そして犬もお遍路さんも、みーんな一緒のフロアーに乗るんです。九州から四国へ渡るような立派なカーフェリーとは大違いですね。この時は、自転車を押したお母さんが、おいしいのど飴を買ったからと、1袋お接待して下さいました。私たちにとって、お遍路の旅は非日常の空間ですが、日常の暮らしの中に、お遍路さんの姿や、お接待の風習があるお四国は、本当に不思議な国です。「いつかこんな土地に暮らしたい…」、歩いていると無性にそう思える時があります。

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 第33番札所 雪蹊寺(Sekkei-ji)門前では高知名物「アイスクリン」を食べてほっとひと息。ドライブの途中に食べるようなアイスと違って、歩き遍路中のアイスクリンは、また格別です。山登りをして頂上で食べるお弁当と同じぐらいかしら。「世界で一番おいしいものは一体なんでしょうか?」…その答えは、「すごくお腹が減ったときに食べる、そのとき食べたいもの」。いくら一流シェフのとびきりのお料理でも、お腹いっぱいのときには、今ひとつでしょう? だから、お食事をおいしく食べたいときは、うんとこさ、お腹を減らしておきましょうね。このときのアイスクリンは…「半額をお接待させてもらいます」と言ってくださって、2個のアイスクリンに1個分のお値段しか払わなかったもので…余計においしかったのかも知れませんけどね。パラソルのおねえちゃん、ありがとう!

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(↑ 夏の旅のいでたち、けっこう涼しいのよ♪)

c0049299_1624403.jpg ここから暑い中を第34番札所 種間寺(Tane-ma-ji)へと向かいます。田んぼの中の道が延々と続いて、日陰もほとんど無いため、ダラダラとつらい道のりが続きました。楽あれば苦あり、というところかな(笑)。休憩を何度もいれるので、意外と時間がかかり、お寺でお参りを終えたのは、もう夕方5時過ぎになっていました。さらに、この時間から、寝る場所を探して、また西日に照らされながら歩きつづけ、暑くてベトベトでヒリヒリながらも、なんとか無事に、仁淀川の河原にテントをはることができたのです。
 しかし、テントをはった、その地面が熱い!それで、いつまでも暑い!かといって、疲れた!その上、眠い!。。。もう、仕方がないので、「自宅に帰ったら、いーっぱいクーラーつけてガンガン冷やして寝ちゃるもん!」と、決心しつつ眠る二人と一匹でした。(第8話【後半】へつづく)

■先代はなの健康ひとくちメモ■
 前回の旅で「はな」は用をたすのにも支えがないと、よろけて腰がくだけていました。まるでスローモーションのように歩いてみたり、立っているだけで足がブルブルと震えていたのです。もう老犬ですものね。そこで、それまでのグルコサミンやコンドロイチン入りのドッグフードに加えて、今度は夏バテ解消も兼ねて、うなぎの骨を微粉末にしたもの(宮崎のうなぎ屋さんが開発したカルシウム)を与えてみました。人間の場合は、気分的な作用もありますので、本当に効いたかどうか、はっきりしない場合がありますが、はなの場合は、何を飲まされたか知らないうちに、しっかりと効果が現われましたので、当たりだったようです^。^v
 お陰で、老犬はなは、今回の旅では走ることもできるようになりましたし、トイレも一人ででき、足が震えるのも、運動をした直後だけになりました。やはり、人間も犬も骨から先に老いていくということでしょうか…、骨粗鬆症を防ぐためにも、やはり、カルシウムと、そして歩くことが大切なんですね。
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(↑ 走る先代はな ^^)

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by inuzure | 2008-08-08 13:08 | ■連載シリーズ | Trackback | Comments(20)
2008年 04月 04日

第7話 カメラマンがいっぱい~土佐路2001年GWの旅

ゴールデンウィークといえば、行楽日和・青空・こいのぼりがつきものですが、2001年は4月末から雨模様となり、おかげで、私たち2人と1匹のヘンロ旅も、いつもより1日遅れての出発となりました。この年はサラリーマンの週末農業で、初体験の田植えを無事に済ませ、夫婦ふたりで自給自足への第一歩となる米づくりを始めた年でしたので、雨の中、一日かけて草取りをし、すっかり腰が痛くなってから、あわただしく出発です。天気予報では雲マークや傘マークが並んでいたものの「かえって涼しいほうが疲れなくていいか」と言いつつ、いつものように九州からお四国へとフェリーにのりました。
c0049299_13372279.jpgさて今回は、室戸岬からの出発です。低気圧で荒れた海と雨上がりの新緑のなか、すがすがしい朝の空気を吸って、2人と1匹の旅がまた始まります。25番札所・津照寺(しんしょうじ)までは、歩きの感をとりもどすようにゆっくりと。「ああ、また四国にきたんだなー」と思いながら、静かに歩きました。本堂へつづく階段を登ろうとすると、先ほど室戸でお見かけした男性が、「ワンちゃんの写真をとらせて欲しい」とのこと。小さな子供と一緒で、動物の写真は思うようにポーズをとってくれず難しいものです。特にはなは、写真が嫌いらしく(笑)カメラをむけられると、フンといった感じでよそを向いてしまいます。にもかかわらず、私たちが心配になるほどフイルムを沢山使って、はなの写真をとって下さいました。おじさん、どうもありがとうございました。

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この頃「はな」は、老犬のくせに無理をしてはしゃぎ、前足首を痛めてしまいました。痛めた直後は3本足で歩くほど痛そうだったので、白内障の飲み薬・目薬に加えて、今度は関節炎の薬(鎮痛剤)も飲んでいます。お寺の階段でも、上りは平気なのですが、下りになると途端に、勢いがなくなるため、階段の下りでは、主人がはなを抱いて下りるようにしました。階段を下りながら、主人は「はなと一緒にへんろできるのも、今回が最後になるかもしれないね。」といいます。若犬の頃から、休みは必ず、この子を連れてお遍路をしていましたので、だんだん歳をとり弱ってくるはなをみるのは、ちょっと淋しいのですが、楽ちんラクチン!という顔をして、主人に抱きついている、その姿は、私を幸せな気分にさせてくれ、これでいいんだ…とも思います。

c0049299_13393270.jpgその日は夜から雨になる予報でしたので、早めにテントをはりましたが、予想以上の、横なぐりの雨と雷で、とうとう一歩もテントの外に出られないまま、朝を迎えました。そしてさらに大雨が続き、持っていた少しのお菓子と水だけで、2人と1匹、さらに丸一日テントの中に閉じ込められる事となったのです。しかし、田んぼの草取りと長旅の疲れがあったため、一日中テントの中で、寝て過ごしても、時間をもてあますことはありませんでした。ようやく夕方になって、お天気雨へとかわり、ありがたくお天道様を拝みながら、ひさしぶりのまともな食事です。我が家からの出発を雨で1日遅らせた上、またここで丸一日のロス…、でも一日中、寝てばかりいたお陰で、翌日はうんと早起きして出発することができました。あせらず、騒がず、四国の風景を満喫しながら、今のことだけを考える私たちのへんろ旅は続きます。

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c0049299_1342743.jpgさて、次に登場したのは女性カメラマンでした。1人が車を下りて来られて、写真をとってもいいか私たちに確認されると、車に向かって両腕で大きな丸。すると、あと2人の女性が、それぞれ手にカメラを持って出て来られました(ひとりで3つもカメラを持っているひとまでいる!!)。もちろんメインの被写体は「はな」です。「はなちゃん、こっちこっち!」と声をかけながら、すごい勢いでシャッターをきっていきます。私たち夫婦も写真は好きなのですが、お姉様(?)たちの迫力には圧倒されっぱなしでした。宮崎に帰って、カメラ屋の人に、このカメラマンたちの話をすると、昔から高知は写真が盛んな所だそうで、高知県人の気質に合っているのでしょうとのことでした。続く神峰寺(こうのみねじ)でも、夫婦連れのカメラマンに、いっぱい写真を撮ってもらい、どうもこの旅はカメラマンに出会う旅だったようですね(笑)。
c0049299_13443344.jpgそして、極めつけが、大山岬の茶屋に夕飯を食べに寄った時のことです。「はな」は台車と一緒に駐車場の隅に待たせていました。すると、どこからともなく沢山の人々が、手に手にカメラを持って現われました。なんと総勢7人!こちらは老若男女のグループで、写真クラブの活動とのこと。私たちが食事をしている間も、待っているはなの周りを取り囲んでおられ、近づきすぎた男性ははなに吠えられたりしていました(笑)。何しろはなは私たちの荷物を見張っているつもりですからね(^O^)店を出ると今度は、歩いている所も写真にとられるとか。車道の向こう側へ渡って、遠くから撮る人、私たちを追い越して、走って行ってから振り向いて撮る人、大きなカメラを持って走ったのでフーフーと息を切らしているおばあちゃん。道を行く人も、何事かと振り返っておられます。アイスクリン売りのパラソルの前を通った時は、おばちゃんがびっくりして席を立ち、どんな有名人が通るのか?!という顔をされていました。
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静かな夏、冬の遍路とはちがい、GWは慌ただしくまわりの時間が過ぎていきます。今日もまだ泊まるところが見つからず、少し気持ちも焦ってきました。やっとカメラマンから解放され、寝る場所さがしに集中しながら、暑くなった夕方の道を西日に照らされながら歩き続けました。

c0049299_13463634.jpgところで、お四国では時々不思議な出来事に出会いますが、懐かしい方との再会もその一つです。数年前に出会った歩き遍路さんに、偶然またお会いする事も一度や二度ではありません。この時も、たまたまカメラマン7人グループの中のNさんが「もしや…」と声をかけて下さいました。お顔を見てアッと思い出したのは、数年前、29番札所・国分寺の山門にて、夏の暑い夕方「今晩はどこに泊まろうか」と思案中、ご夫婦でカメラをもち、何枚か写真をとって下さった方でした。お話によると、あの時の写真は手ぶれしていたので送れなかったとか。私たちも、そのうちすっかり忘れてしまっていましたから、どうぞお気になさらずに、と笑ってお別れしました。その翌日の夕方、ちょっと気が重くなる「犬猫入るべからず」の大日寺に到着してみると、何とそこにNさんが、奥さんをつれて待っていて下さったのです。本当にご縁とは不思議なもので、たった二度しかお会いしていないのに、お大師さまの引き合わせと思うと、親戚のおじちゃん・おばちゃんに再会したように、懐かしさを感じます。奥さんも再会を喜んでくださり、私たちがお参りをしてくる間、はなを車に預かっていただき、とても親切にしてくださいました。
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c0049299_13504970.jpg今回の打ち止めのお寺は30番札所・善楽寺(ぜんらくじ)。お昼前にお参りを終えると、いそいで主人は、室戸岬に置いてきた車をとりに向かいました。電車とバスを乗り継いで、さらに車で、また30番さんまで戻ってくるのに、半日がかりです。その間、私とはなは、ず~っと善楽寺の境内で待たせていただく事にしました。半日も境内に座っていると、それはそれは沢山の方が、お参りして行かれます。おばあちゃまの手を引いた家族連れ。大人数で歌うように朗々とお経を上げていかれる団体さん。そして、大人よりも大きな声で、立派に般若心経を唱える子供たち。このような沢山の人達を見ていると、まだまだこの国も、捨てたものではないなぁ…と思えてきて、何だか嬉しくなってきました。途中、日焼けした肌に鮮やかな黄色い僧衣をまとった、珍しいタイのお坊さんも来られ、托鉢用の器には、沢山の方が食べ物やお布施を入れて行きました。中には、近くに座っていた私のほうにも来られて、はなの水飲み用どんぶりにお金を入れようとされた方もいらっしゃいます(笑)。器の中に水が入っているのをみると、かわりに私の手の平に、チョコンと百円玉をのせて、「がんばってね」と声をかけて下さいました。

午後5時をすぎると、時々、納経所の方へ駆け込んでくる人はありますが、そのうちガランと人気のない境内になります。お寺のかたも、トイレの掃除をしたり、ろうそくの片づけをしたり、本堂・大師堂などの戸締まりをしたりされて、やっとお寺の一日が終わるのです。しとしとと降り続く冷たい雨の中、軒下で雨やどりをしていた私とはなでしたが、お寺の奥様のご好意で、雨に濡れないお堂のほうへ移動させていただきました。そして、もう薄暗くなった午後6時過ぎ、行楽帰りで大渋滞の国道を通り、さらに大混雑の高知市街地をやっと通り抜けて、主人の乗った車が無事に善楽寺の静かな駐車場へと入って来たのでした。

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by inuzure | 2008-04-04 12:58 | ■連載シリーズ | Trackback(1) | Comments(30)
2008年 02月 01日

【番外編】そのとき歴史が動いた!

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 今から15年ほど前、私たちが、はじめてお遍路をしたときは、マイカーを使っての車遍路でした。ガイドブックを見ながら、そして、道の案内看板を確認しながら、お目当てのお寺を探して、納経をいただく。まるで、双六(すごろく)を楽しむように、チェックポイントを通過しながら、見知らぬ町、はじめてのお寺を楽しんだものです。そして、慣れてくれば、1週間で88ケ所全部をまわりきれるようになり、ガンガンスピードアップ♪ でも、ちょうどその頃、車の中から、ふと外を眺めると、歩いてお遍路をしている人が結構いらっしゃることに気づきました。はじめはその都度「わぁ、歩いてるお遍路さんがいるよ!」なーんて、車から眺めていただけでしたが、沢山のそんな人を車で追い越していくうちに、何だか、この歩き遍路さん達が、羨ましくなって来たのです。

c0049299_14131047.jpg若い人も、お年寄りも、そして一人だったり、ご夫婦連れ、グループなど…。最初は「定年後の人や学生さんはいいよね~。休みがたっぷりあるから、歩いて回れる余裕があってさ。」などと、憎まれ口をたたいていたのですが…、どうも、その人たちを観察していると、疲れた足どりでも清々しい表情で、日焼けした顔を誇らしげに歩いている、う~ん、なんか悔しい。。。羨ましい。だんだんと、私たちも歩いてみたい…そう考えるようになってきました。
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①「いつかは歩いてみたいねぇ」が
②「はなと一緒に歩きたいねぇ」となり、
③「はなが生きているうちに、歩いてお遍路できるかなぁ」となってくると、もう
④「少しずつでもいいから、はなと一緒に歩きたいんだよぉ!」と、胸が高なってきました。
そして、そんなふうに感じるようになった、ある日のことです。

c0049299_14191344.jpg ついにその時は、やってきました。
 車遍路の割に、上から下まで真っ白け、徹底した白装束の私たちが、お寺の本堂で丁寧に般若心経を唱え終わり、振り向いたとき、そこに立っていた、ひとりの歩き遍路の若者が、ツカツカ…と歩み寄って来ました。
そして、「お接待です。あなたたちを気に入ったので、受け取って下さい」と、ニッコリ笑って一枚の五百円玉を差し出したのです。
どひゃ~!「き…気に入ったって何?なんで?」 だって、歩き遍路の若者から、お接待をもらうなんて、アベコベですやん!「私たち、歩きじゃありませんから…」と一度は断ろうとしたのですが、何しろ、この若者のまっすぐな目に圧倒されて、ついにそのキラキラと輝く五百円玉は、私の手のひらに、静かに降り立ちました。***「むむむぅ…、これはもう本当に歩くしかない…」と思い立った瞬間でした。

c0049299_14213883.jpg そして、こうして思い立ってしまえば、ほら、我が家の家訓「即実行」(笑)!憧れの歩き遍路をするときがやってきたのです。“二人と一匹、休み毎に、歩ける所まで歩く”という「区切り打ち」(=少しずつ区切って、数年がかりで一周を歩くこと)スタイルで、今でも、ぶっつけ本番の犬連れ野宿旅を続けています。


c0049299_14235880.jpg一つの旅ごとに、新しい発見や出会い、そして、思いがけない再会などもあり…、毎回が忘れられない珍道中。だからこそ、お遍路の旅って、なかなか止められないのですよね~。
こうやって、私たち二人と一匹の歴史は作られていったのでした^^

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【お知らせ】横浜に、飼い主さんから放棄された、ハスキーのべんちゃん(17歳)がいます。
ぜひ、こちらをクリックして、ご覧ください。

※ べんちゃん、新しいご家族が決まりました。良かったです^θ^

by inuzure | 2008-02-01 14:36 | ■連載シリーズ | Trackback | Comments(46)
2008年 01月 17日

第6話 ミレニアムの冬

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 2000年の暮れ、この年末年始の休暇も、仕事おさめのあとに少しだけ仮眠を取り、深夜にあわただしく出発しました。3日前に、ヘンロ旅の準備を始めると、“はな”は、ソワソワして上機嫌です。飼い主が何をしてるのか理解して、あっちへこっちへにおいを確認しながら、ニヤついています。どうやらこの子も飼い主に似て、旅に出るのが大好きなんですね。
 さて、今回の旅は、18番恩山寺(おんざんじ)からです。20番鶴林寺(かくりんじ)へ向けて、険しい山へと入っていきますので、まず、はなちゃん専用台車は、その後のルートを考え、前もって22番平等寺(びょうどうじ)に預かっていただきました。(↓鶴林寺、通称「おつるさん」にて)
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 それにしても、はなはすごく元気。人間で言えば60才を越えた老犬にもかかわらず、山へ入ると、とても若返り、力がよみがえってくるようです。私たちがはなの荷物も背負って、ヒーヒー言っているのも、どこ吹く風で「早く行こうよ!」といわんばかりに、先にぴょんぴょこ進んでは、あえぎながら歩いてくる私たちを振り返ります。

c0049299_23552851.jpg そんな元気なはなも、実は3年前に、ここでリタイヤした経験があります。冬の冷たい雨の中、山を下っていき、人間用カッパをハサミで切って着せたものの、歩きにくいのと寒さと疲れで、すっかりグロッキー。平等寺に着いた時には、はなの全身はガタガタ震えていました。そのため、そこで旅を打ち切って、九州に戻らざるを得なかったのです。しかし、今回は準備万端。犬専用の赤いレインコートも着せましたし、幸い雨もそれほど強くなかったため、順調に、無事に山を下りることができました。そして、なぜか前回の旅にひきつづき、ここでも平等寺に着いた途端、ものすごいどしゃ降りの豪雨。毎度のことながら、勝手に、「お大師さまに守られている!」と感謝しつつ、山門でゆっくりと雨やどり休憩をさせていただきました。(↓雨やどり中)
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 この夜は2000年12月31日、いよいよ大みそか。20世紀から21世紀へと続く遍路旅です。小雨が降り続いていたため、当初の目的地、田井の浜まで出ることをあきらめ、途中の大きな杉の下で眠ることにしました。いつもの年はテントの中で二人と一匹身を寄せ合い、除夜の鐘を聞きながら年を越すのですが、今年は強風波浪注意報が出ている中でのテント泊まりです。時折、木々の枝を揺らして、ゴーゴーとふく風の音は聞こえましたが、大杉のふところに守られて…という感じで、静かに年は暮れていきました。紅白も、年越しソバも、何もない私たちのテントにも、21世紀の到来を告げる、たくさんの花火の音がドドーンと届き、そして、21世紀を迎えてはじめての朝も、私たちは、ただ白い息を吐いて、二人と一匹、静かに歩き出しました。

 さて、初詣で大混雑の23番薬王寺を打ち終えると、いよいよ室戸へと続く、長い長い海岸線。文字どおり空と海を満喫できる道行きです。夏には日陰を求めて、フラフラしながら汗びっしょりでさまよった道も、すばらしい景色と暖かい陽射しに恵まれて、快適に歩くことができます。(↓おばーちゃんにも人気のお遍路犬はな)
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 途中で、まっすぐの国道から、遍路道の集落のほうへ曲がったとき、そのまま、海沿いの国道を進んで行かれたご夫婦連れの、奥様が、チリンチリンと鈴を鳴らしながら、追いかけて来られました。何事かと思い、振り返ってみると、何と青い目の歩き遍路さん! 実際に目の色は確認しませんでしたが(笑)外国人女性でした。ビックリしている私たちに、「OKですか?」とたずねてから、台車に乗ったハナと私たちの写真をとられ、「カワイイデスネ」と言い残し、あっと言う間に国道のほうに戻って行かれました。珍しい外国人のお遍路さんを、私たちもぜひ写真にとりたかったのですが…、何しろ突然の出来事で、カメラを出すチャンスを逸してしまいました、ああ、残念!
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c0049299_004525.jpg その後、私たちは遍路道をはずれて寝る場所を探しに浜辺におりましたので、そのご夫婦とは会うことができず、「あ~写真とりたかったな~」と思いつつ、真っ暗になった5時ごろにはもうテントの中でウトウト…そして、彼らの鈴の音だけが、すぐ上の堤防を通り過ぎていきました。
 翌日は、いよいよ今回の打ち止めのお寺24番最御崎寺にお参りです。気持ちのいい朝、室戸岬に到着してみると、なんと岩場を散策する、あの外人さんご夫婦を発見! 「コンニチハ~!ハーイ!」とお互いに手を振りあって、御蔵洞(みくろど)の前で、やっと彼らと一緒に、記念撮影をすることができました。やった~♪

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それからは、カタコトの英語とカタコトの日本語でお話をしましたが、彼らはオーストラリアから来たご夫婦で、もう一日歩いてから、高野山へもお参りに行かれるとか…。すごいなぁ。最御崎寺の境内では、なんと「オ接待シマス」と言って、無口なご主人が缶コーヒーを買って下さり、思わぬ異国のお遍路さんからお接待までいただいて、身も心も本当に暖かい、素敵な旅のしめくくりとなったのでした。
(ローズマリーさんご夫婦からお接待のコーヒー→)

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最後のおイナリ争奪戦2001
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by inuzure | 2008-01-17 10:20 | ■連載シリーズ | Trackback | Comments(31)
2008年 01月 03日

第5話  ぐるぐる遍路(2000年8月)

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 私たち二人と一匹は、この2000年夏、ついに記念すべき10回目のヘンロの旅を始めました。それまでの数年間、GWも夏休みも、そして冬休みも、まじめにお遍路一筋でやってきましたから、99年の大みそかに高野山にお参りしてから、半年以上経ってしまい、もうウズウズして我慢ができません。台風が近づいていたにもかかわらず、「ひとまず四国に渡ってしまえ!」と、思い切って、大分・臼杵港からいつものフェリーに乗っていました。
c0049299_20564626.jpg 8月14日(月)早朝に1番(霊山寺)さんに着いて、車を一週間置かせて頂けるようお願いしてから、納経所にて「歩き遍路ノート」(?)に名前を書きます。今回は、私たち夫婦も40代をむかえ、愛犬「はな」も10歳を超えましたので、無理せずのんびりと歩かなければね。でも、わかってはいたものの、やっぱりこの真夏の暑さにすっかりやられましたねぇ。(↓水路に座り込むはな)
c0049299_20592126.jpg もう、この頃トレードマークになっていた「はなちゃん専用台車」は、山道に持って行けませんので、焼山寺越えのコースは大きな荷物(リュック)を背負って山歩き…もうダメ!完全にバテバテです。健脚のつもりだったのにおかしいなぁ…すっかりゆる足ペースです。結局のところ、11番藤井寺から12番焼山寺に、なんと8時間もかかってしまいました。でも、そうやって息も絶え絶え、がんばったお陰でしょうか、私たちがヘロヘロになって焼山寺に着き、本堂、大師堂にお参りをした途端、ものすごい豪雨が降り出しました。山登りの途中だったらと思うとゾッとしますねぇ。きっと、お大師さまが見ていてくださったに違いありません。雷まで鳴り出し、それはそれはものすごい雨だったのですが、本堂でしばらく休憩がてらに雨やどりをしていると、だんだんと小降りに…。(↓豪雨の間、軒先での雨やどり)
c0049299_211025.jpg そして、私たちが野宿する場所を探して、テントを張る頃には、もう地面はすっかり乾いておりました。「本当に今日も一日、お守りいただき、ありがとうございました!」と、良くよく、お大師さまにお礼を言ったことは言うまでもありません。c0049299_216539.jpg


 そういえば、もう一つお大師さまにご面倒をおかけしたのを思い出しました。実は、今回1番さんで出会った若者ヘンロK君からもらった納め札、「あとで、一緒に撮った写真なんか、送らなくちゃねぇ」と思っていたのですが、その住所の書いてあるお札を紛失。休憩ごとに、ずた袋の中をごそごそと捜していたのです。寝る前にも、もう一度、懐中電灯をつけて、ずた袋の中を捜索したのですが、やっぱり見つからず、ちょっとがっかりしつつ、眠ってしまいました。あまりに気になっていたのか、その夜の夢は、納め札を見つけて喜んでいる夢、しかも何度も同じ夢を見ているうちに、日の出を迎えてしまいました。
 さて、いつものように、お日さまの光を浴びて目を覚まし、「あ~お札のことが気になって、夢にまで見ちゃった…」と言いながら、ずた袋のふたをめくったときです!なんと昇ったばかりの朝日が照らしてくれた、ずた袋のふたの裏側に、くっきりと納め札の輪郭が透けて見えるじゃありませんか!そうです、見事、いただいたお札、発見することができました。良かった良かった!私、大喜び!「ありがとうございます。お大師さま、ありがとう!」…でもね~お大師さまは、「世話のやける奴だ」って、こぼしていらっしゃるかも知れませんわね(笑)。
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 四国遍路は徳島県鳴門市の霊山寺(Ryo-zen-ji)から始まります。この1番札所のお寺から、10番札所までの間は、足ならしの意味もあるのか、短い間隔で歩きやすく、せいぜい数キロ歩けば次のお寺に到着。ですから、12番札所へ向かう難所の山歩きを終えれば、また里のほうに下りてきて、ひと段落するのです。このときは、最終日、17番井戸寺までお参りさせて頂きましたが、最後の最後になって、もうひと波乱(苦笑)。私の日頃の行ないが悪かったのかしら…、13番大日寺さんの自動販売機でお茶を買った時、こともあろうに財布置き忘れ事件発生!(我ながら、あきれました…)気づいたのは、もう九州へ向かって、車を走らせている時でした。
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 この時のショックは大変なもので、すてきな旅の思い出は、完全にぶち壊し!九州へ帰ってからも落ち込んでしまい、できることなら、もう一度、旅を最初からやり直したい気持ちで一杯になっていました。ところが、やけくそで徳島の警察に電話したところ…、なんと拾って下さった方がいらっしゃったのです!こんな世知辛い世の中に、そんなことが本当にあるのかと、びっくりするやら感謝するやら…。拾ってくださった方へ、少しばかりお礼の品を送らせていただくとともに、またしても「やっぱりお大師さまが助けてくださった」という、感謝の気持ちで一杯になりました。
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 歩き遍路に出るたびに、毎回いろんな出来事があり、たくさんの人や事件と出会います。その中には、もちろん良いことも、悪いこともあるわけですが…、そのすべての事柄は、平凡な忙しい毎日を送る私たちの、かけがえのない思い出となって、私たちの心に刻みこまれていくのです。
(第6話 「ミレニアムの冬」へつづく)

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by inuzure | 2008-01-03 12:02 | ■連載シリーズ | Trackback(1) | Comments(47)
2007年 11月 01日

第4話 はじめてのお四国上陸

 休みになると、いつも旅行ばかりしていた私たちですが、九州に住んでいるのに、不思議とお隣の四国へ遊びに行った事はありませんでした。何度か旅の候補には上がりましたが、ガイドブックを買っても、今ひとつ、行ってみようという気にならなかったのです。今、考えると不思議なのですが、本当に全然行きたいと思わなかったんですよねぇ。要するに、まだ「お四国に呼ばれて」いなかったのでしょうね。(お遍路さん用語かしら?^^)

c0049299_22454847.jpg さて、平成5年の年末休み、旅行プランを立てているとき、ふと四国のガイドブックの最後に付録のようについていた『四国遍路のやり方』というページに目がとまりました。そこに書いてあったのは…納経帳に納経をしてもらいながら、お寺を巡る、というお遍路の説明でした。「お~!これはまさに四国一周スタンプラリー!一度どんなもんか行って見よう!」と、突然二人で盛り上がり、いざ、お四国へ出発! 宮崎から国道10号線を北上し、大分県佐伯港から高知県宿毛(すくも)港行きのフェリーに乗ったのです。

 フェリーといえば、昔、大阪に住んでいた頃、よく乗った大阪南港から宮崎行きのフェリーでは、専用の映写室のようなところで、毎回『寅さん』が上映されていました(残念ながら今は、やっていません)。九州から四国へ渡るフェリーは、それに比べると、小さくて、庶民的なものですが、いかにも寅さんがひょいと現われそうなムード。船に乗ると、急いで売店でお弁当を買って、甲板のベンチで、波に揺られながら船旅を満喫します。わずか3時間の旅ですが、こののんびりとしたひとときが、海を越えていく私たち二人と一匹を、現実世界から異空間へ運んでくれるのでした。。。

c0049299_14474692.jpg こうして私たちは、初めて四国に到着。前もって車の中で地図をながめ、上陸地点から一番近い、四国霊場第三十九番札所 延光寺を目指しました。山の中の大きなお寺をイメージしていましたが、案外平地にある小さなお寺だったので少し拍子抜け。しかし、じっくり観察してみると、これまで京都や奈良の大きなお寺しか知らなかった私たちは、小さいながらも懐深い感じのするこのお寺に、不思議な魅力を感じていました。ただし、まだこの時は、お参りの仕方も知らず、何をどうすればよいのか全くわからず、ただただ本堂のお賽銭箱にお賽銭を投げ込み、黙って手を合わせるだけでしたけどね^。^

c0049299_9264032.jpg さぁ、次は、お目当てのスタンプ帳(?)を買いに納経所へ。それこそピンからキリまである中で、結局、懐ろ具合と相談した結果、オレンジ色の布でできた一番安い納経帳を手に入れて、いよいよ記念すべき、はじめての納経です。お坊様は、受け取った納経帳を、おもむろに開くと、丁寧に亀の絵のついたハンコを押し、そして、何やら墨でサラサラと書き込みをされてから、静かに納経帳を返されました。思わず、マジマジと眺める二人と一匹…。何が書いてあるのか、よく分からんけど、かっこいい~♪ これで、すっかり嬉しくなって、面白くなっちゃったんだわねぇ。(写真は、高野山の納経)

c0049299_14141590.jpg 実は、お遍路の世界に飛び込んだばかりのこの頃、もちろん何もかも初めてづくしでしたから、まったく予備知識もなくて、大師堂(=弘法大師・空海さんが奉られています)にさえ、お参りしていませんでした。本堂にだけ手をあわせ、お参りし、お賽銭を放り込むと、肝心のお大師様の前はスタスタと素通り♪…お大師様、その節は大変失礼いたしました! しかし、今になってみると、却って何も知らずにお遍路をしていたことで、ちょっとしたことから一つ一つ、自分たちなりに、いろんなことを感じ取り、少しずつ理解を深めていけたように思います。(写真は足摺海底館にて 先代はな、お魚をながめるの図)

c0049299_14193483.jpg また、こんな調子でしたから、正直言って、いろいろな失敗も経験しましたが、そんなあれこれも、あとで振り返ってみると、とてもいい思い出^^。一つ一つ自分の体で体験することで、文字で理解するのとは全く違う、身体で感じる真実がたくさんあるのでしょうね。目・耳・鼻などの五感をフル活用して、何かを感じてみるだけでも、きっと、大きな宝物をみつけることができるのです。あ、そうそう、ここでちょっとご注意。道中、たくさんの出会いがあり、中には親切に色々と教えて下さる先輩遍路さんもおられます。でも、残念ながら、仏教についての認識も、お遍路に対する思いも、そして、信じる宗教や宗派も人それぞれ。人によっておっしゃる事が正反対の場合も、多々あります。ですから、アドバイスやお話はありがたく頂戴しても、実際は、あまりこだわる必要はないと思いますよ。一人一人生き方も違えば、歩き方も、しゃべり方も違うんですもの。どうぞ、お気楽に、そして信じる道を淡々とお進みくださいませ。投げられた言葉に、いちいち迷う必要なし!お釈迦さまだって、ある日突然、前触れもなく、悟りの境地にいたったのだとか…あわてない、あわてない♪ ^^v 
(第5話 1番~17番お遍路記へつづく)

by inuzure | 2007-11-01 19:43 | ■連載シリーズ | Trackback | Comments(10)